嗅覚の異常・嗅覚障害

においがおかしい…

いつもならわかるにおいを感じない、本来のにおいと異なるように感じる、周りの人が気づくにおいがわからないなど、さまざまな形で嗅覚障害を自覚される方がいらっしゃいます。嗅覚が低下すると、お食事を楽しめなくなったり、食べ物が腐っていることやガス漏れなどの危険を察知できなくなったりと、生活上の不便を感じるようになります。

嗅覚障害の原因は決して珍しいものではなく、5割近くは副鼻腔炎が原因のものです。風邪に伴う嗅覚障害も多く、それらを含めると7割を超えるという報告があります。また、新型コロナウイルス感染症に感染すると、発熱等の症状が治まっても嗅覚障害が続く患者さんも珍しくありません。

主な症状

  • 匂いを感じない
  • そのもの本来の匂いと異なる匂いを感じる
  • 何をかいでも同じ匂いに感じる
  • 周りの人が気づく匂いが、わからなかった

嗅覚の仕組み

空気中のにおい分子が鼻の通り道を抜けます。嗅粘膜にある嗅神経がそれを受容すると、嗅球と呼ばれる神経を経由して脳へと信号が伝わり、人はにおいを感じ取ります。

嗅覚障害の原因

嗅覚障害は、問題のある場所によって大きく以下の3つに分かれます。

  1. 気導性嗅覚障害:においが届く経路に原因がある場合

    副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎、鼻中隔の曲がりによって鼻が詰まり、嗅粘膜の嗅神経ににおいが届きにくくなることが原因となります。

  2. 嗅神経性嗅覚障害:においの神経に原因がある場合

    主に、ウイルスや薬剤などが原因で嗅粘膜の嗅神経に異常が発生したり、転倒・交通事故などの外傷をきっかけに嗅神経の末端である嗅糸が切れてしまったりすることで匂いを感じにくくなります。

  3. 中枢性嗅覚障害:においの神経からさらに奧の部位に原因がある場合

    脳挫傷、脳腫瘍、脳出血、脳梗塞、パーキンソン病やアルツハイマー型認知症などの神経変性疾患によって引き起こされます。

嗅覚障害の検査

診断においては、基準嗅力検査や静脈性嗅覚検査で、実際にどれほどにおいを感じ取れているのかを調べます。また、原因となっている疾患を見つけるために耳鼻科用CT検査、鼻内視鏡検査、アレルゲンの精査、亜鉛の検査を行います。

  1. 基準嗅力検査

    5種類の基本臭でどの濃度でにおいが認知できるか測定します。これらの結果の平均により、嗅覚障害の程度を診断します。また、症状が改善した場合、はじめの結果と比べることにより、どのくらい改善したのかが、わかります。

  2. 静脈性嗅覚検査(アリナミンテスト)

    アリナミンを注射し、どのくらいの時間でにおいを感じ、どれだけにおいが持続するか測定します。一般的に、アリナミンテストに反応があれば良好な予後が期待できます。

  3. 画像検査(CT)

    嗅覚障害の原因の約50%は副鼻腔炎、約30%は感冒といわれています。副鼻腔炎は、顔の骨の内側にある空洞の炎症なので、CTを撮らないと診断がつきません。また、鼻の骨格が歪んでいるせいで、鼻が塞がっている場合もあります。当院では、CTを撮影し、その場で画像診断を行うことができます。

  4. 鼻内視鏡検査

    直径2.6mmと非常に細いデジタルビデオ内視鏡で鼻腔内を撮影します。鼻粘膜の色、鼻汁やポリープの有無など、鼻の中の状態を鮮明な画像で診察することができます。

  5. アレルゲンの精査

    アレルギーの原因物質をアレルゲンといいます。アレルギー性鼻炎が原因の場合、鼻炎により嗅覚障害が生じます。血液検査で、アレルゲンの精査をお勧めします。

  6. 亜鉛

    亜鉛は生体に必須の微量金属であり、不足すると、さまざまな細胞の調子が悪くなり、味覚障害などの症状が起こることが知られています。味覚障害も合併している方には亜鉛の検査を行っています。

嗅覚障害の治療

嗅覚障害の種類によって、治療法が異なります。
副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎などに伴う、気導性嗅覚障害に対しては、まずは点鼻薬や内服薬、鼻洗浄による治療を行います。鼻の通り道の骨格が歪んでいるなど物理的に鼻が詰まっている場合や、内服しても治らないような副鼻腔炎に対しては、手術をお勧めすることがあります。
感冒後嗅覚障害など嗅神経の障害が原因の場合には、漢方薬(当帰芍薬散、加味帰脾湯、人参栄養等など)、ビタミンB12などの内服が有用です。また、においの神経の再生には刺激が必要です。トレーニングにより嗅神経再生が促されるので、嗅覚刺激療法というリハビリテーションのしかたをアドバイスいたします。

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