難聴

「年のせい」だけではない難聴

「相手が何か喋っているのはわかるのだが、何を喋っているのか、内容が理解しにくい」、「家族からテレビの音がうるさいと指摘された」など、さまざまなきっかけで、耳の不調に気づかれる方がおられます。ご年齢とともに音は聞こえにくくなるものだと自己判断し、病院を受診せず、そのまま様子を見ていらっしゃる方も多いように思います。しかし、実は難聴にはいろいろな原因があり、早期に治療を行うべき難聴、薬や手術で治るタイプの難聴もあり、適切な診断が必要です。

耳の内部図

難聴の主な原因と治療法

急性中耳炎

風邪や感染症など、ばい菌に感染することで発症する急性中耳炎。鼓膜が真っ赤になったり、中耳という空間に膿がたまったりすることで、耳の痛さや耳だれ、発熱、耳の詰まりなどが生じます。軽症の場合、鎮痛剤やステロイドの点鼻薬、抗生剤の服用によって4、5日すれば症状の改善が期待できるでしょう。必要に応じて、鼓膜を切開して膿を取り除いたり、塩水で洗ったりする処置を行うこともあります。
急性中耳炎

滲出性中耳炎

急性中耳炎から移行した結果、中耳の粘膜から滲出液がにじみ出てきてしまう状態である滲出性中耳炎。中耳に黄色い透明状の液体がたまっていきますが、急性中耳炎のように痛みなどの症状はありません。治療では鼓膜切開を行い、滲出液を取り除くほか、鼓膜チューブを挿入します。これは中耳の換気を良くすることで早期回復をめざすための処置です。
滲出性中耳炎

鼓膜穿孔

鼓膜に穴が開き、ふさがらなくなった状態を鼓膜穿孔と呼びます。通常、中耳炎などで空いてしまった鼓膜の穴は、数日後には自然とふさがります。しかし、中耳炎を繰り返す(慢性中耳炎)場合に、穴がふさがらない場合があります。
これまでは耳の後ろにある筋肉の膜を切開し、鼓膜の穴に貼る手術が一般的でした。2019年からは鼓膜再生療法(リティンパによる鼓膜穿孔閉鎖術)が保険適用となり、患者さんの負担が少なく治療できるようになりました。鼓膜再生療法では、まずは鼓膜の穴の周囲をメスで切り取り、鼓膜が再生しやすい状態にします。そこに再生を促す薬が含まれたリティンパ(スポンジ)を挿入・固定し、再生を促していきます。スポンジは1ヵ月から数ヵ月ほどで溶けてなくなります。1回の処置で塞がらない場合、2ヵ月ほどの間隔を空けて数回治療を繰り返し行います。いずれも局所麻酔かつ短時間で済む措置のため、患者さんの負担はあまりありません。
鼓膜穿孔

突発性難聴(とっぱつせいなんちょう)

ある日突然、片耳だけ音が聞こえなくなってしまう病気です。音が聞こえなくなると、すぐにご自分でわかる方もいらっしゃいますが、意外にも、ご自分ではあまり判断がつかず、「耳が詰まる感じがする」「音がこもる」というような自覚症状の方もいらっしゃいます。聴神経の調子が悪くなることが原因ですが、現時点では、その詳しい理由はわかっておりません。治療としてはステロイドの点滴や内服、血管を広げ血流を良くする薬、代謝を良くする薬、神経の栄養になるようなビタミンB12などの内服を行います。治療は発症してからできるだけ早く始めたほうが良いといわれています。片耳だけ急に調子が悪くなったら早急に耳鼻科咽喉科を受診してください。
加齢に伴い、聴力は徐々に低下します。電子体温計のピピピという音など、特に高い音が聞こえにくくなる場合が多いようです。どなたにでも起こることなので、病気ではなく、加齢現象なのです。「最近、会話をするとき不便」「家族からテレビの音が大きいと言われる」「相手の言葉が理解しにくい」といったように、生活で何らかの支障があり受診されます。音を聞く神経が少しずつ減って聞こえなくなることはわかっているのですが、現在の医学では、根本的に治療する方法はありません。しかし、補聴器を使うことで生活の支障を軽減することが期待できます。補聴器は音を大きくする装置なので、装用したからといって聴神経が治るわけではないのですが、装用することで会話がしやすくなります。難聴が進むと、患者さんご本人は相手が何を言っているのかわからないので話しかけるのが面倒くさくなり、また、ご家族など周りの人も、その患者さんに喋りかけても会話を続けるのに手間がかかるので、よほど大事な用事ではないと喋りかけなくなります。こうして日常生活での会話量が減ります。人間の脳はしゃべることで活性化するといわれており、脳トレーニングの一環としても、補聴器装用をお勧めしております。当院では、各種聴覚検査を行い、聞こえの状態を確認し、さまざまなタイプの中から適した補聴器をご提案します。また、補聴器を一度購入しておしまいではなく、実際に使いながら細かく調整を入れ、自身の生活に合った聞こえ方にする必要があります。当院では毎週火・木曜に専門の時間帯を設け、サポートに取り組んでいます。音の聞こえにくさを感じている方は一度ご相談ください。

アクセス WEB予約 お電話